堕天日記〜DO−DOの怠惰なる日常とか〜
やっとこ二つ目
あまり時間もないので(実は明日、三十分だけど早出が決定しております)、さくっとここだけ更新。
久々にBOSSで、ネタは今更ながらの「世界樹の迷宮」でしかも1の方。
だってまだクリアしてないし、2は買ってもないし。
そう言うことで今回はいわゆる導入編みたいな感じで。




 やぁ、はじめまして。

 私がこの冒険者ギルド「アースブルー」のリーダーを務めるユークリッドだ。

 職業はアルケミスト。得意な術式は炎。

 とは言ってもまだまだ未熟であることは否めないのだがね。

 私がこのギルド「アースブルー」を組織したのは勿論、世界樹の迷宮と呼ばれている迷宮を踏破する為だ。

 エトリアの街の外れで発見された巨大な地下樹海の迷宮。

 何故こんなものが存在しているのか? 
 
 ここに住むモンスターや他では見られない植物などは一体何処から来たのか?

 元来好奇心旺盛な私にとってこの迷宮は果てしなく魅力的なものに思えた。

 そして、私の師とも呼べる人が亡くなったのを機に私はエトリアへとやって来た。

 ここの迷宮での冒険はきっと私の好奇心を満たし、更にアルケミストとしての実力もより上位のものとしてくれるだろう。

 そう言う希望とか野心とかを持って(ちなみに私は名声や富などにはそれほど興味はない)この街を訪れた私を待っていたのは、一人では到底踏破など出来ようはずもない規模の迷宮と現実的な問題としての資金不足だった。

 装備品を買うにしても宿に泊まるにしてもとにかく金は必要だ。消耗品代だって馬鹿にならないのだから。

 これらの問題を解決するにはこの街にある冒険者ギルドへ行って自分のギルドを作り、そして仲間を募って共に迷宮に挑み、そこで得たものをこの街にあるシリカ商店と言う店に売り払うことしかない。

 これはこの迷宮を踏破すると言う目的と資金を稼ぐと言う二つの問題を同時に解決することが可能なとても理想的な話だった。

 そう言う訳で私は早速冒険者ギルドへと赴き、私をリーダーとする冒険者ギルド「アースブルー」を登録した訳だ。

 アースブルー……私がこの街に来る前に住んでいたところは周りが一面の草原に覆われ、とても緑豊かなところだった。それを思い起こした私がこの名をすぐさま思い浮かべたのも無理はないだろう。

 さて、とりあえずギルドを登録したのはいいもののまだそのギルド員は私一人。これでは世界樹の迷宮に挑むなど出来ようはずもない。

 何と言っても私はアルケミスト、直接攻撃に晒されれば一溜まりもないのだ。

 とりあえずは私を守ってくれて、尚かつ直接攻撃も出来る前衛を務める人間が必要だ。

 まだギルドに入っていない冒険者を捜そうと私がやってきたのはベルダの広場と呼ばれる広場だ。

 ここはこのエトリアの街のほぼ中心に位置しているらしく、ここからなら冒険者ギルドやシリカ商店、宿や施薬院、執政院、酒場、更には迷宮の入り口とほぼ何処にでも行けるようになっている。

 だいたい何処かのギルドに入っている冒険者なら一人でいることはないだろうし、ここで見ていればまだギルドに入っていない冒険者はすぐに見つかるだろう。

 

 と思ったのが三時間程前。

 だいたいの冒険者は皆何処かのギルドに入っているみたいでぞろぞろと迷宮の入り口へと向かっていく。

 たまに一人きりで歩いている冒険者を見かけるのだけども、声をかけてみるとやはり何処かのギルドに所属していて、この日は偶々迷宮探索のメンバーから外れて休養中だったり。

 流石にこの迷宮が見つかって随分経つだけに、そうそう新参者はいないらしい。

 私などは随分出遅れた方だ。

 これではなかなか仲間は見つかりそうもない。

 今日のところは諦めて宿に帰ってまた出直そうかと思って歩き出した時だ。

 街の入り口に一人の少女が立っているのが見えた。

 何と言うか、垢抜けない。何処かの田舎から出てきたのだろうと言うことが一目でわかる。

 私もそれほど都会に住んでいた訳でもないのだけれども、その私よりも見た感じが田舎者っぽかった。

「……うしっ!」

 何やらその少女は自分に気合いを入れると街の中へとずんずん入ってくる。

 その少女は私の前を通り過ぎ、そのまま何処へ向かうのかとじっと見ていると迷宮の入り口の方へと向かって行くではないか。

「ちょ、ちょっと待ちなさい!」

 私が慌てた様子で少女に声をかけるとその少女は立ち止まって私の方へと振り返った。

 何で止めるのか、と問いかけたそうな顔をしている。

「あなた、まさか一人で迷宮に挑むつもり?」

 私がそう尋ねると、少女はコクリと頷いた。

「どれだけ自分の実力に自信があるかは知らないけど、一人であの迷宮に挑むなんて無理よ。悪いことは言わないわ。やめておきなさい」

 私の言葉に少女がちょっとムッとしたような表情を浮かべる。でもすぐに思い直したのか、じっと私の顔を見てきた。そしてニッコリと、でも何処か照れくさそうに笑う。

「それもそうだね。ちょっと気合い入り過ぎちゃってた」

 おそらくはこの迷宮の噂を彼女も聞いたことがあるのだろう。一人で挑むにはあまりにも広大すぎる世界樹の迷宮。自分が如何に無茶なことをしようとしていたのか、それに気付いたに違いない。

 ちなみに私はこの迷宮の存在は知っていたけども、その規模までは知らなかった。この少女はそれを知っていたのだから私よりも色々とこの世界樹の迷宮についての情報を集めてきたのだろう。一見猪突猛進型の田舎者っぽく見えるけど、案外しっかりしているのかも知れない。

「ありがとー、おねーさん。それじゃ」

 そう言って去っていこうとする少女。

「ちょっと! あなた、この迷宮に入るには執政院に行って許可を貰わないといけないのよ! わかってる? それにギルドとか」

「えー。何か面倒臭いなー、それ」

 私の声に少女が立ち止まり、振り返る。

 彼女の顔には本当に、心底面倒臭そうな表情が浮かんでいた。

 少しの間、どうしたものかと考えていたらしい彼女だけど、やがて私の方を見てニンマリと笑った。それからまた私の側にやってくる。

「ねーねー、おねーさん。見たところおねーさん、仲間探してるんでしょ?」

「そ、そうだけど?」

「丁度いいね! ボクもこの街に来たばかりだし、まだ仲間とかいないんだ。仲間になってあげるよ!」

 ナイスアイデアだと本人は思っているのだろう。満面の笑みでそう言い、私の顔をじっと見てくる。

 さてどうしたものか。

 確かにまだ仲間は一人もいない。しかし、だからと言ってこの少女を安易に仲間にしていいものだろうか。

 この少女が一体どう言う職業でどれだけの実力を持っているのかまったく未知数。

 アルケミストである私を守れるのかどうかが最大の問題だ。

 しかし、この少女はもう決まりだって感じでニコニコと満面の笑みを浮かべて私を見上げている。

「……わかったわ。あなたを仲間にしましょう」

 ちょっと考えたあげく、私はそう言って頷いた。

 この先、新たに一人きりで何処のギルドにも入っていない冒険者が見つかるとは限らない。

 ならこの子を仲間にしておくのは悪い選択肢ではないだろう。

 それに、意外と実力者かも知れないし。

「私はユークリッド。職業はアルケミストよ」

「ボクはシグルーン! 一応ソードマンだよっ!」

 シグルーンと名乗った少女と握手しながら私は思う。

 一応って何だ、一応って。



 とりあえず宿に向かいながら話を聞いてみるとシグルーンはやっぱり聞いたことないような田舎から出てきたらしい。ソードマンとしての腕もまだまだ未熟らしく、ここには自分の腕を鍛える為にやってきたんだそうだ。後はその田舎で暮らしている親や弟妹たちの為にお金をたくさん稼いで少しでも楽をさせてやりたい、とか何とか。

 ほとんど好奇心オンリーでここにやってきた私とは大違いだ。

 まぁ、私には楽をさせてやりたい親などもういないし兄弟もいないから、と言うこともあるのだが。

 何にせよ、このシグルーンって言う少女はいい子の様だ。

 パーティを組むに当たって、やっぱり柄の悪いのとか性格の悪い奴よりはずっとマシ。

 この子ならずっと仲良くやっていけそうだ。

 もっともこの子の方が私に愛想を尽かさなければ、だけど。

 そうこうしているうちに私達はこの街にある唯一の宿である長鳴鶏の宿へと辿り着いた。

 街に宿がここしかないからここを使う他ないのだが、意外とこの宿、がめつい料金システムとなっている。

 まぁ、今はそんなことはどうでもいい。

 私は宿の入り口のところで思わず立ち止まってしまっていた。

「何でなのよっ! 納得いかないわっ!!」

「そう言われましてもこれが当店のシステムとなっておりまして」

 この宿のフロアマネージャーが金髪の少女に詰め寄られている。

 詰め寄っている少女の顔には心底納得いかないと言う感情が表れている。

 いやまぁ、だいたい見当はつく。

 彼女が怒っているのはきっとこの宿の料金システムのことについてだろう。

 何せレベルが上がれば上がる程料金が高くなると言う非常に納得のいかないシステムなのだから。

 しかしながら、こうしてその事について正々堂々と文句をつけている人がいるとは思わなかった。

 更に言えばフロアマネージャーに詰め寄っている金髪の少女は私と同じくらいの年齢に見える。

「お姉ちゃん、もういいよ〜」

 おや、よく見れば金髪の少女の後ろにもう一人、赤毛の少女の姿が見えるじゃないか。

 ふむ、今のセリフとどことなく似たような感じの容姿。

 あの二人はきっと姉妹に違いない。

「何言ってるのよ、ユエル! こう言うことははっきりしておかないとね!」

「だって、他の人が見てるから〜」

 赤毛の妹にそう言われて金髪の姉の方が入り口に立ち尽くしている私達の事にようやく気がついたようだ。

 私達の方を見ると彼女は顔を真っ赤にさせ、そして詰め寄っていたフロアマネージャーから離れた。

 それから赤毛の妹を連れて壁の方へとそそくさと歩いていく。

「ちょっと、何で早く教えないのよ!」

「だってお姉ちゃんずっとあの人と喋ってて」

「だからって……早く教えてくれてたらあんな恥ずかしいところ見られなかったのにぃ……」

「ご先祖様に申し訳が立たない?」

「そうよぉ……偉大なる聖騎士だったご先祖様にあわせる顔が……」

「大丈夫だよ、お姉ちゃん。きっとご先祖様も許してくれるって」

「そうかなぁ?」

「そうだよ。だってお姉ちゃんは何も間違ってないもん。うん、お姉ちゃんは正しい!」

「正しい?」

「正しい! お姉ちゃんは正しい! ユエル自慢のお姉ちゃんだもの! 絶対にお姉ちゃんが正しいの!」

「そうよ……私は間違ってなんかない! 私は正しい!」

「そうだよ! お姉ちゃんは正しい! 間違ってなんかない!」

 初めはひそひそ話していた二人だったんだけど、何か段々テンションが上がってきたみたいで最後には二人揃って大きい声で叫びあっている始末。

 何なんだ、この姉妹は。

 関わり合いにはならない方が良さそうだ。

「シグルーン、行こう」

 そう言って私が隣にいたはずのシグルーンの方を見ると、いつの間にかそこにはいなくなっている。

 さて、この街に来たばかりで知り合いもいないはずの彼女が何処に行ったのだろうかと思ってとりあえず後ろを振り返ろうとした私だったが、すぐに聞こえてきた声にその動きを止めた。

「そうだよ! 君たちは間違ってなんかない!」

「私は間違ってなんかなぁいっ!」

「お姉ちゃんは正しいっ!」

 いつの間にかあの姉妹と一緒になって声を張り上げているシグルーンの姿を見て、私は思わず頭を抱えてしまう。

 出来ればあの姉妹とは関わり合いになりたくなかったのだが、今のところ私にとって唯一のパートナーである彼女が何故か一緒になって声を張り上げている以上、関わり合いにならざるを得ないだろう。

 私はため息を一つつくと、シグルーンとひたすら正しいだの間違ってないだのと声を張り上げている姉妹の元へと向かうのだった。


 何故か妙に意気投合してしまったシグルーンと謎の正しい姉妹をつれて私は与えられた部屋に入り、思い切りため息をついていた。

 また妙な連中と関わり合いになってしまったものだ。

 類は友を呼ぶと言うが、そうなると私も彼女達の同類と言うことになってしまうのだろうか。

 いや、それはない……はずだ。

「ユークリッド!」

「どうしたんだ、シグルーン。急に大声を出すなんて?」

 大きな声で私を呼ぶシグルーンの方を私はゆっくりと振り返る。

 しかし、彼女の声は大きい。

 おそらくだが、地声からして大きいのだろう。

 宿に戻ってくる間もそれはもう元気すぎる程の大きい声で色々と語ってくれたのだから間違いない。

「二人とも仲間になってくれるって!」

「はいっ!?」

 な、何をいきなり言い出すのだ、この子は?

 この二人はついさっき会ったばかりで、偶々こうして一緒にいるのだが、元々どう言う素性の持ち主で何故このエトリアにやって来たのかすら知らないんだぞ。

 それなのに一体どうして仲間にするという話になるんだ?

「ユークリッドが何か考え事している間にお話ししたんだよ。二人ともこのエトリアに来たばっかりでまだ何処のギルドにも入ってないし、新しくギルドを立ち上げてもないんだって! だから仲間にならないかって言ったらすぐにOKしてくれたよ」

「そ、そうなんだ……」

 シグルーンの、そのあまりもの積極的な行動に私は思わず呆然としてしまう。

 いや、本人は至って、その好意でやってくれているのだと思う。

 そもそも迷宮に入る時は出来る限り五人で行く方がいいという話を宿に戻ってくる途中で彼女にしたのは私だ。

 もっとも私もギルドに行って片目のギルド長の人からその話を聞くまでは知りもしない話だったのだが。

「よろしく。えっと、ユークリッドって言ったかしら?」

 そう言いながら金髪の少女が私に向かって右手を差し出してきた。

 私は少し投げやりにその手を握り返しつつ、コクリと頷く。

「で、貴方の名前は?」

「私はノエル。一応パラディンよ。で、この子はユエル。私の妹でメディックをしているわ」

 ノエルと名乗った少女がそう言うと、その少し後ろに立っていた赤毛の少女がぺこりと頭を下げた。

 ふむ、パラディンにメディックか。

 防御役に回復役。

 はっきり言おう。

 この偶然に、私はあまり信じていない神に感謝を捧げる。

 とりあえずこれで迷宮の探索に必要最小限の面子は揃った。

 前衛の直接攻撃役にソードマンのシグルーン、防御の壁としてパラディンのノエル。

 後衛は回復役のメディックであるユエルと術式による攻撃役の私。

 本当を言えば後もう一人欲しいところなのだが、贅沢は言っていられない。

 誰かが我々よりも早く、世界樹の迷宮を踏破してしまわないうちに我々が世界樹の迷宮の謎を解き明かすのだ。



 さて、そう言うことで翌日の朝。

 起きてみると隣で寝ていたはずのシグルーンの姿はもう無く、何故か同じ部屋で寝ていたノエルとユエルの姉妹が非常に仲むつまじそうに寄り添って眠っている。

 とりあえず私は二人を起こすと、迷宮に入る準備に取りかかった。

 とは言ってもそれほど時間がかかる訳でもない。

 精々、回復用の薬や装備を身につける程度だ。

 そうこうしているうちに起き出したノエルとユエルも迷宮に入る準備を終え、私達は宿を出た。

 おそらくシグルーンは待ちきれなくなって先に迷宮の入り口に行っているのだろう。

 そう見当をつけた私達が迷宮の入り口にまでやってくると、やはりというか案の定というか、シグルーンが待ちきれないといった様子で迷宮の方を覗き込んでいるのが見えた。

「あ、ユークリッド! ノエルにユエル! 早く早く!」

 やって来た私達に気がついたのだろう、シグルーンが大きく手を振っている。

 やれやれ、と言う風に肩を竦めながら手を振っている彼女の側に歩み寄っていく私達。

 すると彼女の側にもう一人、金髪の女性が居ることに私は気がついた。

 ちょっと目つきの鋭い女性――私やノエルよりも年上のようだ。

 それに、何と言っていいのかわからないが、何となく危険な雰囲気がする。

「シグルーン、この人は?」

 この危険な雰囲気のする女性をチラリと見つめながら、私はシグルーンに声をかけた。

「んー。一人で迷宮に入っていこうとしてたから止めたんだ。で、話を聞いてみるとやっぱりこの町に来たばかりだって言うから一緒に行こうって誘ったんだ」

 またこのパターンなのか。

 思わず頭を抱えたくなってしまう。

 いや、シグルーン自身は決して悪いことをしているつもりはなく、事実悪いことをしている訳ではない。

 しかし、こうもなし崩し的に仲間が、しかも私の知らないところで増えていくというのは一体どうしたものか。

 だいたいこのギルドのリーダーは私のはずなんだが。

「ま、そう難しい顔しなさんな、お嬢ちゃん。迷宮に挑むのに最適な人数は五人って言うだろ。だったらこのあたしを仲間に加えて丁度五人。文句なんか無いだろう?」

 不敵な笑みを浮かべてその女性は言う。

 何と言うか、この女性はもう自分が私達の仲間になることを決めているらしい。

 いや、それを決めるのはリーダーである私のはずなんだけど……。

「あたしは役に立つよ。少なくてもこの面子とは職業も被らないしね」

 何と言う自信だろうか。

 確かにこの女性は一見して素人ばかりだとわかる私達よりも経験豊富そうに見える。

「……わかった。貴方を仲間に加えるわ。言っておくけどリーダーは私だからね」

「了解、リーダー。で、名前ぐらいは教えて貰ってもいいだろ?」

「……人に名前を尋ねる時はまず自分から、って習わなかった?」

「フフッ、それもそうか……そうね、あたしのことはアマダムとでも呼んでちょうだい」

 ちょっと考えてから彼女は自分の名を名乗った。

 おそらくは……偽名だろう。

 何か事情があるのだろうが、あえて問い質す必要を感じなかった。

 どう言う事情があるにしろ、それを話したくないからわざわざ偽名を名乗ったのだろうし、今必要なのはそう言う事情を聞き出すことなんかよりも、この人を私が信じられるかどうかだ。

「ユークリッドよ。よろしく」

 じっとアマダムと名乗った女性を見据えて私は自分の名を名乗る。

「よろしく、ユークリッド。それにあなた達も」

 アマダムはそう言って私の後ろにいるノエル、ユエルに笑顔を向けた。

 チラリと二人の方を振り返ってみると、ノエルは少しぎこちない笑みを、ユエルはごく普通に笑みを返している。

 どうやらユエルはともかくノエルは私と同じくアマダムと言う女性をあまり信用し切れていないようだ。

 しかし、リーダーである私が彼女の加入を決めたのだからとりあえず文句を言うつもりはないらしい。

「さぁ! それじゃ出発だねっ!」

 シグルーンがもう待ちきれない、と言う感じで声を張り上げる。

「おー!」

 まるで彼女に合わせるようにそう言って拳を突き上げたのはユエル。

 この二人、出会ってまだ一晩しか経っていないが歳が近いだけに結構仲良くなったようだ。

 その二人が連れ立って迷宮の入り口の方を歩いていくのを見て、慌てた様子でノエルが追いかけていく。

「ちょっと待ちなさい! ちゃんと順番ってものが!」

 そう言いながら先を進む二人を追ってノエルが、続いて、そんな彼女の様子がおかしかったのか笑いを堪えながらアマダムが迷宮へと向かっていく。

 果たしてこのメンバーで大丈夫なんだろうか。

 ちょっと不安になってくる私。

「行かないの、リーダー?」

 そう声をかけられたので顔を上げてみると、迷宮の入り口のところで四人が私の方を振り返っている。

 私を待っているのだと言うことはすぐにわかった。

 それはそうだろう。

 私がこのメンバーを率いるリーダーなんだから、私が行かなければ話にならない。

「行くに決まってるでしょ」

 私はそう言うと、四人の方へと走り出した。



 この先、一体何がこの迷宮の中で待ち受けているのかわからない。

 しかし、このメンバーとやっていかなければならないのだ。

 如何なる困難や厄介事もまだ出会ったばかりでよくわからないこのメンバーと。

 果たして私はこの世界樹の迷宮の謎を解き明かすことが出来るのだろうか。

 何となくだが……非常に不安だ……。



世界樹の迷宮SS
”大地の蒼は深き翠緑に挑む”出会い編 終
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